2017-09

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植民地の代官・メア元沖縄総領事

 ケビン・メア氏は「横紙破りの外交官」と、自他共に認められた存在であったようだ。南部のサウスカロライナ州で生まれ、ジョージア州で育って、地方の有名でない大学を3ヶ所も出ている。いわゆるアメリカ東部の一流大学を出たエリート外務官僚ではなかったらしい。その経歴で国務省の日本部長まで進んだのは異例のことなのかもしれない。実務能力と仕事熱心さを買われてそこまで出世したのだろうか。

 相手の反発や批判を恐れず、本音でズバリ発言するモノの言い方が、軋轢や摩擦を生み出しはしたが、沖縄地元紙の社説で「米政府はメア総領事も含め、悪い情報もいい情報もはっきり、正直に説明してくれる。この点は日本政府とは大違いだ。」との評も受けたそうである。
 アメリカ政府の方針に忠実に、本音を日本側や沖縄に伝えていくことを信条としたことが、本国政府の評価を受けて出世できたとの意味の事を言っている。確かに、常に曖昧にしかものを言わず、本音の「米軍基地押し付け」を、真綿で首を絞めるような形で進めてくる日本政府の官僚たちに比べれば、気持ち良い態度と評価する向きもあろう。

 しかし、日本部長という地位に上り詰める為には、本国部署の方針に僅かでも反する言動は行えなかったに違いない。メア個人の資質は人間味あふれる人物像であったと言えるだろう。だが、特に沖縄の基地政策に関してはゴリゴリの居座り政策機能強化方針の姿勢を堅持するのが彼の官僚としての信条であったのだ。

  同書の中の「『摩擦』の原因」という項で、米軍基地と周辺住民との長年の「摩擦」の原因として、「米軍基地が建設された当時は周囲にはほとんど民家がなく、農家が点在する程度だったのが、今では人口密集地に変わってしまったことが大きな理由の一つです。」と、あたかも、先に造られた基地の周辺に、沖縄の住民が集まってきたのが悪い、というようなことを言っている。
 普天間基地(及び嘉手納基地)は、戦前は農業地帯で今よりは人口密集地域ではなかったのは確かだ。しかし、そこには豊かな田畑が広がっていて、幾つもの集落が点在していたのだ。メアの言い方はまるで、無人の荒地に米軍が来て基地を造ってやった、みたいな言い方ではないか?
 だが、そんな問題でもない。仮にそこが荒地だったとしてもである。外国の軍隊が否応なく居座っている狭小な沖縄本島で、米軍基地がかなりの平坦地を占拠している中で、住民は何処に居住地を造ればよいと言うのだろうか。メアの物言いは植民地へ派遣された代官の態度以外の何モノでもないのだ。
 普天間基地に近接する「普天間第二小学校」は、危険ならばどこかへ移転すればよいなどとも言っているが、これもまたそんな問題ではない。私も、「普天間第二小学校」ほどではないが、「嘉手納基地」から近い所に在った小学校・中学校に通っていた。危険度は「普天間第二小学校」と大して変わらないと思う。また、昔も今も、殺人的飛行機騒音に苦しめられている。もしメアに「騒音が苦しくて、危険もあるというのなら移転しろ」と言われたら、私は頭に血が上るだろう。

 メアは共同通信の報道で『普天間飛行場は(住宅地に近い)福岡空港や伊丹空港と同じで特別に危険でない』と述べた」としているが、本書の中でも「普天間は特別に危険でない」という項を設けて、再度それを力説している。

 「飛行場の危険度は周辺の人口密度と航空機の発着回数で測られます。日本の民間空港を見ると、福岡空港は普天間基地周辺よりも人口密度の高い地域につくられ、ニ、三分おきに大きな旅客機が発着している。兵庫県の伊丹空港も似たような状況で、発着回数を比較すると、普天間基地はこれら日本の民間空港と比べてみても危険度は少ない。…」
と言っている。

 だが、それは一寸違うのではないかと言いたい。確かに、例えば嘉手納飛行場と比べて、普天間飛行場が危険度が高いとは言えないと思う。これまでの軍用機の事故の歴史を見れば、1959年の石川市・宮森小学校墜落事故のように、嘉手納基地所属の飛行機の起こす事故のほうが、人命が奪われるような悲惨事故がはるかに多いのが事実だ。ジェット機や輸送機、旅客機などの水平離着陸機、いわゆる固定翼機の発着回数は嘉手納基地、及び福岡空港伊丹空港などの本土民間空港に比べて、普天間は少ないのかもしれない。
 しかし、普天間基地は海兵隊のヘリコプター部隊なのである。2004年に起きた沖国大への墜落事故は記憶に新しい。ヘリコプターは墜落事故を起こし易いというのが一般のイメージであり、自衛隊や民間報道機関のヘリ墜落事故は頻繁に起きているのが実際ではないのか?普天間は垂直離着陸機(=ヘリ)の発着回数が圧倒的に多いという点で、世界一危険な飛行場と見なされて当然ではないか。

 沖縄県の資料では、復帰以降、普天間基地の航空機事故は平成19年12月現在で固定翼機11件、ヘリコプター75件の計86件となっており、ずっとヘリコプター事故のほうが多い。そして、人命が失われる事故のすべてがヘリコプター事故である。死者・行方不明者の合計、実に48名である。偶々か、犠牲者は全て米軍兵士であり沖縄民間人はいない。犠牲米兵も哀れだが、沖縄人には彼らに同情する余裕などない。沖縄民間人に犠牲者がなかったと言っても、これから民間人にとって普天間基地が危険でないとは言えない。

 メアは単刀直入にモノをいう「マットーバー」(沖縄言葉で「正直者」)を自分の売りとしているが、沖縄へ米軍基地を押し付ける為の、沖縄へ米軍が居座ることへの詭弁性でもってこの本全体が貫かれていると思う。
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キー坊@ウチナー

Author:キー坊@ウチナー
沖縄本島中部、巨大な米軍基地を抱える町の生まれ。
齢を重ねるごとに、沖縄戦へのこだわりが強くなります。
曽野綾子・『ある神話の背景』は沖縄を究極的な軍事基地にする目的を持っています。「集団自決」は沖縄戦の集約された出来事だと思います。『ある神話の背景』は沖縄への抑圧・差別の集約文書です。

HP・「その『神話』の背景」(文献・資料集)
http://keybow.co

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