2017-06

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腐臭漂う震災後の言説

 曽野綾子の書いた評論は、少なくとも「ある神話の背景」以後の沖縄に関するものは悪臭が漂っていたのだが、3.11震災以後に雑誌・新聞コラムに書いているエッセイの類に、私はある種の腐臭を感じている。

 権力側の番犬仲間というに相応しい同世代のお友達、たとえば竹村健一、上坂冬子は過去において、まとまった著書を出して、ベタな原子力擁護論を行っていた。
 曽野を牝番犬の筆頭だとすれば、牡番犬の頭目は渡部昇一だと思うのだが、昇一は著書を出してまでの原発擁護の言論はやってないようだが、雑誌等で原子力を肯定する発言をしていたように覚えている。
 彼らは、体制に強く順ずる言論・執筆をする事により、権力側から保守論壇の重鎮としての地位を与えられているのだから、ロクに専門知識は無くとも原子力発電を支持する言論は当然の行為であろう。

              
                        曽野綾子と渡部昇一
 竹村らに比べると、曽野綾子は著書においても、雑誌・新聞コラムの文章でも、「原発」についての発言があるかどうかを検索で見る限りは見当たらない。黒部ダムの現場技術者の苦行を称えた小説(「無名碑」など)を書いていて、「電気のない所に民主主義はない」と、発電の重要性は口にしていた。今回の震災以後も、雑誌コラムなどでこの言葉を繰り返しているが、勝間和代などが行ったように(その後謝罪した)、積極的な原発擁護論は発言してない。これまでも原発を推進するような言説は行ってないのだから、福島第一原発の事故が起こった後、原発を擁護する言説をしなくても、曽野の言論活動に矛盾がないとは言える。

 危険な施設であるに関わらず権力側の膨大な利権のために、全国に多数建設推進された「原子力発電所」である。曽野のような権力御用文筆家として高い地位にあるモノカキが、これまで何で、竹村健一や上坂冬子のように、強い原発推進の言論活動を行わなかったのか?私は、彼女は独特の「勘」の良さで「原子力」が危険なシロモノであると感じていて、これを推薦するような発言をしたら将来何かが起こったとき、自分の立場がヤバクなると直感していたのだと推測する。原発推進を発言すれば権力に気に入られる事は分っていたが、彼女の生来の自己防衛本能が、それを拒んだものと思う。竹村や上坂らよりも、役者が一枚も二枚も上手だったという事だ。

 曽野綾子の直観力の良さは、沖縄との関係に大いに発揮されたと思う。29歳の時、沖縄を初訪して「慶良間」の事件を知った。36歳の時、仲宗根政善元女学校教師に出会って、従軍女学生(姫ゆり部隊など)の戦時記録を出版する事を思いつき、大手出版社(講談社)がスポンサーとなり、沖縄に乗り込んで沖縄戦の事を調べ上げた。39歳のとき(1970年)、『生贄(いけにえ)の島』を出版して、沖縄の人間を信用(油断)させた。こういう過程で、当時作家として行き詰まって「鬱」に陥っていた曽野は、沖縄に、自分の停滞を打開してくれるネタが在ると直感し、「渡嘉敷島集団自決」についても綿密に調べ上げ、1972年には、決定的な、「沖縄は嘘をついて日本軍人に冤罪を着せた」というテーマの『ある神話の背景』を出版した。この書は権力側のオボエめでたく、これを足掛かりに女流作家・保守論談の頂点に登ったのである。沖縄を食いものにして、自分の立身出世を成し遂げたのは、持ち前の天才的とも言える「勘」と執着力の為せる業だろう。
 
 これまで「原発」を推進する言説を為さなかったといっても、所詮は御用作家、原発を否定する発言もするはずはなく、震災後「福島第一」が危機に陥っている状況でも、「千年に一度の災害」というエッセイでは、「原発」には触れず「水と電気があるのは稀有のぜいたく」と日本の繁栄振りを逆に強調するだけである。「マニュアルなし」というエッセイでも、「原発」に触れず「電気がないところには、正常な形での民主主義はないのだから、族長支配になる…」と書き、ここでも「地震と津波は千年に一度の災害だった…」と書いて、暗に電力会社の責任を否定するような事を言っている。
 その後「いきてるといいね」というエッセイで、ここでようやく「原発」についての言及があるのだが、「原発」そのものを否定する言及はもちろん無いが、明らかに擁護することもない。一九八六年のチェルノブイリの事故から十三年経った一九九九年、日本財団の会長のとき、チェルノブイリに入った事を書いている。現地が悲惨な状況であったという風には書いてない。逆に、そのような災害に見舞われても、逞しく幸せそうに生活している人たちが居るという風に書いている。遠まわしの「原発」擁護論であるが、この書き方は現地の人々に対する侮蔑感を含んだ書き方であると私は感じる。(つづく)
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キー坊@ウチナー

Author:キー坊@ウチナー
沖縄本島中部、巨大な米軍基地を抱える町の生まれ。
齢を重ねるごとに、沖縄戦へのこだわりが強くなります。
曽野綾子・『ある神話の背景』は沖縄を究極的な軍事基地にする目的を持っています。「集団自決」は沖縄戦の集約された出来事だと思います。『ある神話の背景』は沖縄への抑圧・差別の集約文書です。

HP・「その『神話』の背景」(文献・資料集)
http://keybow.co

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