2017-08

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『アリランのうた――沖縄からの証言』を見て

 在日韓国人の朴寿南女史(74才)の制作した『アリランのうた――沖縄からの証言』を先月初めて見た。この映画は91'年に発表されていて、私は見た事なかったが、この映画の存在は知っていた。おそらく沖縄に従軍させられた朝鮮人慰安婦の事を主に描いたものだろうと思っていた。
 はじめて見てみたら、内容は慰安婦よりも朝鮮人軍夫の証言が主なものだった。慶良間の三つの挺進隊に従軍させられた軍夫を主として、10名ほどの元朝鮮人軍夫が画面に登場して、当時の模様を語っている。終戦から45年が経った時点(現在より20年前)での証言であるが、従軍時20代前半であった人たちが60代後半の初老になった時点で、45年前の自分の体験を、つい昨日の事のように話している。

 慶良間には推定600人~900人の軍夫が派遣されていた。その中の10名程ではあるが、消息が判明してカメラの前で証言している事に私は意外な感じを受けた。「ある神話の背景」をはじめ慶良間の戦況に関する著書に、その後の軍夫を追った記述を私は見た事がなく、消息が分りにくいものと思っていたからである。

ariran-okinawaka.jpg


 だが朝鮮人軍夫と言えども、正式に赤紙召集で徴用された軍属であり(シン・ジェオン証言)、それは厚生省援護課の資料には名簿が残されている筈であり、消息を尋ねるのにそれほどの困難は無かったと思われる。
 その点、正式に徴用されたのではない慰安婦の消息は、資料は残されてないだろうし、事の性質上追及するのは困難なことであろう。沖縄に残留したペ・ポンギ(渡嘉敷島)さん一人だけのインタビュー画面と、彼女が首里の池端を散策する光景は印象的である。

 小生が字幕で確認した元軍夫の氏名は以下の通りである。座間味島に従軍した人がもう一人出ているが、字幕に姓名が出てないので記載できない。
座間味島
チョン・テッキ、イ・サンチュン  
阿嘉島
シン・ジェオン、キン・ジェソン、カン・インチャン、ホ・ゴン
渡嘉敷島
カン・スジン、ユ・ゴンス、アン・スボク
沖縄本島
キン・オニョン(金元栄)

 朴 寿南(パク・スナム)監督は在日韓国人であり、同胞に対する思い入れがあったから、韓国まで出向いて元軍夫を探す意思が有ったのだと思う。
 曽野綾子は、たやすく探せる曾根一等兵についても、それをしなかったくらいだから、朝鮮人軍夫については全くその意思が無かっただろう。この辺にも、「ある神話の背景」を書いた曽野綾子の政治的意図が見えてくるのである。

 渡嘉敷島に従軍したユ・ゴンスの証言では、軍夫の班長だった自分は、ある日本人一等兵に、「この戦争は勝ち目が無いから一緒に逃げよう」と、逃亡を持ちかけられてびっくりしたという。
 川田文子「赤瓦の家」では、曾根一等兵は軍夫長・フクダにその当日に逃亡を持ちかけ、短時間にそれを実行したと書かれているが、ユ・ゴンスは、「数日前に一等兵から話を受けてその気になったが、実行日に上役から見回りを命じられ、自分は逃亡に加わること出来なかった、一等兵は別の仲間を連れて逃亡した」と言っている。この辺り、川田文子に曾根元一等兵が証言した事とは多少ずれがあるが、かなりの数の軍夫に曾根一等兵は逃亡を働きかけていたという事である。

 座間味島のイ・サンチュンの証言には興味深いものがある。座間味の慰安所の元締めであり、梅澤隊長専用の慰安婦であった「池上トミヨ」という朝鮮人女性が米軍上陸の直前、朝鮮人軍夫達は日本軍の足手まといになるので、全員処刑するよう梅澤隊長に進言したという。イ・サンチュンは、この事を隊長らと同じ壕に居た仲間の軍夫から聞いたという。さすがの梅澤隊長もこれを聞き入れなかったというが、池上トミヨはある意味で「植民地人根性」旺盛な女傑だったのだろう。
 73歳の梅澤元戦隊長もインタビューに出ているが、池上トミヨについては、「彼女は慰安婦ではなかった。知的であり、女の英雄だった。大分可愛がってやった。その後はどうしているか分らない。多分米軍相手にその種の仕事をしたのではないか。」と言っている。

 仲間を皆殺しにしろといった「池上トミヨ」に怒りを感じていたイ・サンチュンは、捕虜になった後、フクダと話し合って、黒人兵に、あの女を思うままにしろと言って、好きなようにさせてやったと言っている。地元民の証言でも、「池上トミヨ」は飛びぬけての美人だったという。梅澤の話でも、英語も話せて最高の女だったと言っている。そんな有能な人間が、権力には同胞も自分の魂も売り渡したのである。

 『アリランのうた――沖縄からの証言』は、沖縄・慶良間に従軍した朝鮮人軍夫の「生の証言」を記録した資料として価値ある映像だと思う。その元軍夫達も現在、齢80代後半に成っているのだから、映画に出演・証言した人たちも、その多くがこの世を去っているだろう。  
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キー坊@ウチナー

Author:キー坊@ウチナー
沖縄本島中部、巨大な米軍基地を抱える町の生まれ。
齢を重ねるごとに、沖縄戦へのこだわりが強くなります。
曽野綾子・『ある神話の背景』は沖縄を究極的な軍事基地にする目的を持っています。「集団自決」は沖縄戦の集約された出来事だと思います。『ある神話の背景』は沖縄への抑圧・差別の集約文書です。

HP・「その『神話』の背景」(文献・資料集)
http://keybow.co

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